クラウドソーシングは気軽に安く仕事の依頼ができることで有名です。しかし、クラウドソーシングではやってはいけないこと、気をつけなければならないことが存在します。今回はクラウドソーシングを使う上で知っておくべき法律についてまとめました。
業務委託契約について
業務委託契約とは、業務を他の個人や企業へ委託する契約のことです。
クラウドソーシングを使う場合、基本的にはこの業務委託契約を結ぶことになります。業務委託契約について詳しく理解しておかなければ、受注者との間のトラブルの元になるため注意しましょう。
業務委託契約は、大きく2つに分類されます。一つが「請負契約」、もう一つが「準委任契約」です。
「請負契約」とは、成果物の完成を目標とした契約で、イラストの作成を依頼する契約がこれに該当します。
対して、「準委任契約」とは、一定の業務を行うことを目標とした契約です。成果物に対してではなく、あくまで業務を行ったことに対して報酬を支払う点で、「請負契約」とは異なります。
具体例的にはクラウドワークス の時間単価制の依頼が準委任契約にあたります。
契約を結ぶ段階で、「請負契約」なのか「準委任契約」なのか、受注者と確認をしておかなければ、報酬の支払い等でトラブルが発生する可能性があります。
また、業務委託契約は、会社と従業員が結ぶ雇用契約とは異なります。そのため、発注者と受注者の間に主従関係は発生しません。受注者は、自身に課されたノルマを達成しさえすればよく、いつ、どのように業務を行うかは受注者の自由です。
知的財産権について
知的財産権は「著作権」と、商標権や意匠権といった「産業財産権」に分けられます。クラウドソーシングを利用する際に、注意しなければならないのが「著作権」です。
著作権は、物や作品を、第三者に無断で利用されないための権利です。
文章やイラストなどをやり取りする場合が多いクラウドソーシングでは、その成果物の著作権が誰の元にあるのかが重要になります。
クラウドソーシングサイトは、基本的に、利用規約で著作権の譲渡について定めています。受注者に対する報酬の支払が済んだ時点で、発注者側に著作権が譲渡される場合が多いようです。そうしなければ、その成果物を利用する際に、その都度受注者に許可を取らなければならなくなり、業務が煩雑になってしまうからです。
例えばコンペ方式では、採用された作品の著作権は発注者に譲渡され、それ以外の作品の著作権の譲渡は行われない場合がほとんどです。発注者となる場合は、自身が利用するサイトの規約を確かめて、著作権の譲渡についてどのように定められているか確認しておきましょう。
著作権に関連して、著作人格権についても触れておきます。
著作人格権は、著作者が精神的に傷つけられないように保護するための権利です。
著作権は譲渡が可能ですが、著作人格権は譲渡できません。そのため、多くのクラウドソーシングサイトの利用規約は、権利者に対して、著作人格権を行使しないよう定めています。
著作人格権の不行使を定めなければ、発注者が成果物に手を加えたいと思ったとしても、受注者に著作人格権(同一性保持権)を行使されてしまえば修正が一切不可能になってしまいます。こちらも、業務が煩雑にならないために定められたきまりです。
※著作権、著作人格権の関係性については、著作人格権って何?クラウドソーシングを使うために知るべき知識 で詳しく解説しています。
下請法について
下請法は、下請事業者(受注者)が、親事業者(発注者)から不当な扱いを受けないよう保護し、取引の公正をはかる法律です。
下請法は、発注者と受注者の資本金によって、適応されるか否かが決まるため、公正取引委員会のページを参照し、その基準についても理解しておきましょう。
発注者の資本金が1000万円を超えてくると適応の対象になる可能性がありますが、個人でクラウドソーシングを利用する際はそこまで気にする必要はありません。
下請法は、親事業者に対して、4つの義務と、11の禁止事項を定めています。
例えば、親事業者は様々な書類の作成や、報酬の支払い期日を決める義務があります。また、成果物の受領を拒否したり、受領後に特別な理由なく返品を行うことが禁止されています。詳しい義務、禁止事項の内容についても、公正取引委員会のページに掲載されているので、そちらをご覧ください。
万が一、禁止事項に違反した場合、公正取引委員会からの指導・勧告のほか、罰金が科される場合があります。違法性の意識がない場合もペナルティが課せられるため、知らなかったでは済まされません。
また、受注者にあらかじめ了承をとっていたとしても、禁止事項に記載された行為を行えば違反とみなされてしまいます。気が付かない間に違反行為をしてしまわないよう、正確かつ最新の情報を入手しておきましょう。